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2021年6月6日日曜日

田井出身の高嶋哲夫さんが山陽新聞記事

 (山陽新聞2011年6月6日日曜日総合4ページ 掲載)
地方が力を持つには大きな経済単位が必要 

岡山県吉備中央町への首都移転を提案した著書「首都岡山から新しい日本の形」が3月に発行された 。
ベースになったのは2012年にインターネット上で転載し14年に書籍化「首都崩壊」。
 学者が東京直下型地震が近いと予測する中、関東周辺で地震が頻繁に起こり始め政府が首都移転を計画し、移転先に吉備高原が選ばれるという物語。
作品を機に吉備中央町を始め岡山県内に講演で呼ばれるようになった。
反応が良く執筆を進められたこともあり、話してきたことを本人まとめた。

ズーム
首都機能移転  1990年に衆参両院が国会と政府機能の移転推進を決議して 、
92年には国会移転法が定められた。 首相の諮問機関中丸国会等移転審議会は99年、3箇所の移転候補地を盛り込んだ送信をしたが、東京の猛反対などがあり、2000年代には理論が下火になった。 その後政府の「まち・ひと・しごとの創生総合戦略」に政府機関の地方移転が明記され、文化庁の京都移転などが決まった。同庁は昭和17年、先行移転として地域文化創生本部を京都市に設置。22年度中に全面的に移転する予定。消費者庁も一部が徳島市に移っている。 
道州制 
道や州うと呼ばれる広域時代に国の権限を委譲し、地方分権を進める制度。 政府の地方制度調査会は2006年、「導入が適当」首相に答申した。 
東信は都道府県を廃止して道州に再編するとし、道州の数を9点11点13点とした3通りの区割りを示した。
中国地方は9道州案では四国と一緒に、11、13道州案では別々になっている。 
答申後、政府が道州制ビジョン懇談会を設けるなどしたが、合併を迫られる可能性を危惧した町村長ら地方の側からも慎重論が出て、議論は低調になっている。 
東京一極集中の是正 
「首都崩壊」執筆のきっかけは。
1995年に体験した阪神大震災。最初に書いたのが「 M 8」という自身をテーマにした作品だった。地震だけでなく、津波、火山、台風なども調べ、日本は自然災害が多い国だと改めて認識した。今後十数年のうちに起こると言われているのが東京直下型地震と南海トラフ地震。現状では東京に人や企業、もの、お金が集中しており、国全体が壊滅状態になりかねない。ダメージを少なくするにはどうすれば良いか。一番いい方法は地方分散を進め、日本の形を変えておくことだ。解決の方策として首都移転と道州制の必要性を訴えた。
ー著書で首都の移転先を吉備高原とした理由は。自然災害の少なさと安定した地盤だ。政府の審議会が首都機能の移転先として示した「栃木・福島」「岐阜・愛知」「三重・畿央」も検討したが福島は東日本大震災(2011年)に伴う原発事故があった。名古屋の辺り近畿地方は南海トラフ地震の影響を受ける。近畿には大きな活断層もある。一方岡山は活断層が非常に少ない。西日本国豪雨(18年)では甚大な被害が出たが 、基本的には気候に恵まれ、 自然災害に遭いにくい。 
吉備高原は空港に近いといった交通の利便性もある。 
ーその方策くは 。
デジタル技術の活用をもっと考えるべきだ。 インターネットを使ったビデオ会議システムを利用すれば、議会や会議のために政治家や官僚がひとつの場所に集まる必要はない。
 どこからでも参加できる。
 新型コロナウイルス禍の中、各国首脳による国際会議もオンラインで行われたりしている。 
ーコロナ禍は政治中・行政の在り方にも影響を与えている。 
東京一極集中が避けられていれば、コロナ対応ももう少し上手にできたのではないか。 
感染が始まった昨年春、全国の学校を一斉休校させたが、地方では感染者数0というところもあった。 
そうした地域は感染予防を図りながら、授業を続けられたはずだ。 政府が東京目線で考えるから、地域に応じた対応ができなかった。 
医療体制についても逼迫した都道府県がある一方で、余裕のある県が近くにあったりする。 県境という枠がネックになっており、広域で物事を考えるべきだ。 
ー道州制の考え方につながる 
貴方が力を持つためには、もっと大きな経済単位が必要だ。 地方創生を本気で考えるならば、財政的自立が欠かせない。 現状では地方交付税などをあてにしなければならないから、国の言うことを聞かざるを得ない。 
県単位では新しい産業が育つのは難しい。地域の事情をよく知っている人達がまとまり、産業を生み出していけば日本自体が変わっていく。 
ーコロナ禍でリモートワークが普及する中、東京から地方に移住する動きが出始めたとの指摘もある。 人材派遣大手のパソナグループが東京から淡路島(兵庫県)に本社機能を移し始めたり、中小の it 企業が地方移転したりといった動きはあるが、決して大きな流れにはなっていない。 
 喜ぶのは早計だろう 。 
だが
 一極集中の是正は本気で考えなければならない時代になってきている。 
新型コロナをめぐる問題が、その前哨戦のように感じる。 

高嶋さんの著書。首都の移転と合わせ、道州制導入の必要性を訴えている 
「首都岡山 」ー新しい日本の形 ー

作家:高嶋哲夫さん
たかしまてつお
玉野市出身。
 慶応大学工学部を経て同大学院修了。日本原子力研究所「日本原子力研究開発機構」研究員を務めた後0米カリフォルニア大学に留学。帰国して作家に転身した。(メルトダウン)(イントルーダー)など著書多数。内閣府の「デジタル・防災技術ワーキンググループ」未来構想チームのメンバーを務める 。神戸市在住


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